サイエンスカフェ「体内におけるがんと免疫の攻防」の感想
3月26日東京都医学総合研究所が主催しているサイエンスカフェというイベントに参加しました。
テーマは、「体内におけるがんと免疫の攻防」です。
対象が小学校高学年以上ということもあり、とても簡単な言葉での講義で非常に新鮮でした。パワーポイントもアニメーションを多く入れたり、わかりやすい動画を混ぜたりしていて、とても参考になりました。
今回学んだことを、ざっと書いていきたいと思います。
がんとは、細胞が無限に増殖する病気で、正常な細胞を阻害して様々な病態を引き起こすものです。
細胞が増殖しすぎることで、遺伝子に傷がつきます。2本鎖が切断され、その切断部分を修復する時に元通りにならないことがあり、それにより異常な細胞が生成されます。
今回新しく、キネシンというタンパク質を知りました。
キネシンとは、モータータンパク質の一つで、細胞の中にある微小管を移動して様々なところに必要な物質を運ぶ役割をします。また、細胞分裂にも重要な働きをします。
キネシン=運び屋! と覚えておこうと思います。
発がんに関わる遺伝子としては、大きく2種類あります。
1種類目は、原がん遺伝子です。
原がん遺伝子が異常になると、過度な細胞増殖が引き起こされます。
細胞は増殖する際に、細胞内の不活性型Rasとホルモンが反応することで活性化し細胞分裂をして不活性型に戻る、というのを繰り返しています。
つまりホルモンによって、細胞の増殖がコントロールされています。
しかし、ダメージを受けた細胞は常に活性なRas(RasとGTPが結合している状態)で、この状態だと、ホルモンの有無に関わらず増え続けます。
なので、原がん遺伝子に異常が生じると、細胞が無限に増え続けるのです。
(異常なRasを産出するRas遺伝子の変異は、多くのがん患者で確認されています)
2種類目は、がん抑制遺伝子です。これは、p53が有名で、遺伝子にダメージの入った細胞をアポトーシスに誘導してくれます。
その他にも、エストロゲンなどホルモン側の増殖によって発がんすることもあります。
免疫システムは、大きく2つの細胞が関与しています。
1つ目は、B細胞です。B細胞とは白血球の一種で、抗体を産出させウイルスを中和・無効化してくれる細胞です。獲得免疫の一種。
白血球の中でもリンパ球に分類され、リンパ球の20~40%を占めます。
2つ目は、キラーT細胞です。キラーT細胞は、感染細胞を殺す細胞のことです。
ワクチンを接種すると、樹状細胞がウイルスの情報を得て記憶します。それによって、次回から変異種を含めた同じようなウイルスが来ても対応できるようになります。
ただ、古い細胞が死んでしまうこと、また、ワクチン一回で細胞が完全に記憶できる訳ではないことから、何度か接種することを推奨しているそうです。
この研究室では、TCRを取り出し壊変させて、がんの異常細胞に効率的に結合させるような受容体を作る研究をしているそうで、面白そうだなと感じました。
○新しい単語○
Ras:細胞の増殖などに関わるタンパク質。Rasの異常は、細胞のがん化に大きく関わる
TCR:T細胞受容体(T Cell Receptor)。体内に一億種類以上存在する
T細胞が異常な細胞を見つけるためのセンサーとして働く